ロングとは通貨を「買って保有する」こと、ショートとは通貨を「売って保有する」ことである。FXでは価格が上がる局面でも下がる局面でも、どちらの方向にも利益を狙うことができる。
「下がるとわかっているのに、何もできない」という経験
株式投資の経験がある人は、こんな場面に覚えがあるかもしれない。
ニュースを見て「この会社はまずいな」と思った。株価は明らかに下がりそうだ。でも、自分はその株を持っていない。だから何もできない——ただ眺めているだけだった。
FXでは、この「下がるとわかっているのに動けない」という状況がない。
下がると思えば「売り(ショート)」から入ればいい。価格が下落したところで買い戻せば、その差額が利益になる。上がっても下がっても、自分の判断を取引に反映できる。これがロング・ショートという仕組みの本質だ。
ロングとショートの基本

ロング(買い)とは
ロングとは、通貨を買ってポジションを保有することだ。
「USD/JPYをロングする」とは、ドルを買って円を売ることを意味する。ドル高・円安が進めば利益が出て、ドル安・円高が進めば損失が出る。
価格が上昇すると予想するときに使うのがロングだ。
例
- USD/JPY=150.00円でロング(ドルを買う)
- USD/JPY=152.00円で決済(ドルを売る)
- 差益:2.00円 × 取引数量=利益
ショート(売り)とは
ショートとは、通貨を売ってポジションを保有することだ。
「USD/JPYをショートする」とは、ドルを売って円を買うことを意味する。ドル安・円高が進めば利益が出て、ドル高・円安が進めば損失が出る。
価格が下落すると予想するときに使うのがショートだ。
例
- USD/JPY=150.00円でショート(ドルを売る)
- USD/JPY=148.00円で決済(ドルを買い戻す)
- 差益:2.00円 × 取引数量=利益
「持っていないものを売る」という仕組み
ショートに対して「持っていないのに売れるのか?」という疑問を持つ人は多い。
実際には、FX業者が取引に必要な通貨を貸し出す仕組みになっている。トレーダーは業者から通貨を一時的に借りて売り、後で買い戻して返す。差額が利益または損失になる。株式のような「信用売り」と同じ考え方だが、FXでは特別な申請なしにショートができるのが標準仕様だ。
ロングとショートで意識が変わること
ロング・ショートを理解すると、相場の見方が変わる。
株式投資では「価格が上がらないと意味がない」という一方向の思考になりがちだ。しかしFXでは、上昇トレンドでも下降トレンドでも、どちらも利益を狙えるチャンスになる。
ただし、ここで注意したい点がある。
「どちらでも利益を狙える」ということは、「どちらでも損をする可能性がある」ということでもある。ロングで損をするのは価格が下がったとき、ショートで損をするのは価格が上がったときだ。方向を間違えれば、どちらも損失になる。
チャートを見て「上がりそうか、下がりそうか」を判断することよりも、「どちらに張っても、損切りのルールを守れているか」 の方がはるかに重要だ。
→ 詳しくは「[#MM-001 損切りとは何か]」
なお、ロング・ショートどちらのエントリー時にも、同時に損切りラインを「逆指値注文」として設定しておく習慣が損失管理の基本になる。エントリーと損切り注文をセットで出せるIFD注文などの活用については「[#GL-014 エントリー]」で詳しく扱う。
ポジションを「持つ」と「閉じる」の対称性
ロングとショートはそれぞれ、開始(エントリー)と終了(決済)の操作が対称になっている。
| エントリー | 決済 | |
|---|---|---|
| ロング | 買う | 売る |
| ショート | 売る | 買い戻す |
ロングで「買って始めた」なら、「売って終わる」。ショートで「売って始めた」なら、「買い戻して終わる」。この対称性を把握していないと、決済の操作を誤るリスクがある。

→ 詳しくは「[#GL-014 エントリー]」
スワップポイントとロング・ショートの関係

ポジションを翌日以降も保有し続けると、スワップポイントが発生する。
スワップポイントは2国間の金利差に基づいており、ロングかショートかによって受け取りか支払いかが変わる。
たとえばUSD/JPYの場合、米ドルの金利が円より高い状況では、ロング(ドルを買い保有)するとスワップポイントを受け取り、ショート(ドルを売り保有)するとスワップポイントを支払う。
なお、金利差の状況や業者のコスト構造によっては、原則とは逆にショートでも受け取りになるケースや、ロングでも支払いになるケースが稀に発生する。スワップポイントは業者ごとに異なるため、取引前に業者のスワップ一覧を確認することを勧める。
短期売買では影響が小さいが、ポジションを数日〜数週間保有するスイングトレードでは、スワップポイントが損益に影響する要素になる。
→ 詳しくは「[#GL-009 スワップポイント]」
FAQ
- Qロングとショートはどちらが難しいですか?
- A
本質的な難易度に差はない。ただし多くの人が株式投資から入るため、「買って上がったら儲かる」というロングの感覚に慣れていて、ショートに心理的な違和感を感じることは多い。慣れの問題であり、どちらが優れているということはない。
- Qロングとショートを同時に保有することはできますか?
- A
できる。これを「両建て」という。同一通貨ペアで買いと売りを同時に保有する状態だ。ただし、両建ては証拠金が2倍必要になるうえ、スプレッドコストも二重にかかる。有効な局面は限られており、多用は勧められない。
- Q「ショート」という言葉は株と同じ意味ですか?
- A
基本的な意味は同じで、「価格が下がると利益になるポジション」を指す。ただし株式のショート(空売り)には証券会社への申請や貸株料が必要なケースが多いのに対し、FXのショートは標準機能として誰でも使える点が異なる。
- Q決済のタイミングを間違えるとどうなりますか?
- A
ロングなのに「売り」ボタンではなく誤って「ショート」で新規注文してしまうと、ポジションが2倍のショートになる。逆も然りだ。エントリーと決済の操作画面をよく確認することが重要で、特に損失が膨らんで焦っているときに操作ミスが起きやすい。
- Qロング・ショートはどの通貨ペアでも使えますか?
- A
FXで取り扱われているすべての通貨ペアでロングとショートが可能だ。ただし通貨ペアによって流動性(取引のしやすさ)やスプレッドが異なるため、慣れないうちはUSD/JPYやEUR/USDといった主要通貨ペアから始めることを勧める。
次に読むべき記事
- [#GL-014 エントリー] — ポジションを持つタイミングと操作を理解する
- [#GL-018 含み益・含み損] — 保有中のポジションの損益がどう動くかを知る
- [#GL-009 スワップポイント] — 保有日数に応じて発生する金利差調整額
- [#MM-001 損切りとは何か] — 方向が外れたときに損失を止める考え方
- [#GL-003 レバレッジ] — ロング・ショートを拡大する仕組み


コメント